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ケーススタディー: はとバス様


はとバス 広報室
杉田真佑子氏

はとバス、本社車庫でのユニーク企画がメディアで相次ぎ露出

稼働していないバス60台で巨大迷路
車内換気体験で安全をPRし話題に

「会社始まって以来の光景で、切なかったですね」。広報はこう振り返った。レモンイエローの車体色が目印のはとバス。新型コロナウイルスの感染拡大を受け4月から約2カ月間、東京観光を含むすべてのバスツアーを休止し、出番のないバスが所狭しと留め置かれた車庫が、黄色に染まった。しかし、この稼働していないバス60台で巨大迷路をつくってしまうのだから、その企画力には驚くばかりだ。元々はバスの換気性能の高さをアピールしようと、業界を挙げた取り組みの中から出てきたアイデア。逆境を逆手に取ったイベントとして、メディアで話題を集めた。「社会に価値のあるニュースを発信していきたい」と広報。コロナ禍における企業の情報発信のあり方とは――。
9月の4連休に、はとバスの車庫で「今しかできない!」と銘打ったイベントが話題になりました。稼働していないバスでつくった「巨大迷路体験」です。まず、企画の狙いときっかけから教えてください。

「バスでつくる巨大迷路体験」と題した東京駅発着のバスツアーです。元々はバスの換気性能の良さを知っていただきたいという目的がありました。

大型バスの車内は密空間というイメージを持たれがちですが、バスには「換気制御装置」が備わっており、5分程度で内気と外気の入れ替えができるようになっています。車内換気体験で、スモークを焚いて空気が入れ替わる様子をご覧いただければ、バスが安全な乗り物であることを実感してもらえるのではと考えました。

ただ、それだけではお客様に楽しんでいただくことができません。そこで出てきたのが、普段、なかなかお越しいただく機会のない車庫で稼働していないバスを使い巨大迷路をつくるという、まさに「今しかできない」企画でした。

車庫での催しは、弊社の創業70周年で車両の整備工場の見学を組み込んだツアーを実施した2018年以来です。

迷路体験のツアーは当初は3日間の予定でしたが1日追加され、4日間の日程で行われ、大盛況でした。

総勢344名のお客様にお越しいただきました。大変好評で増便するという形で対応させていただきました。親子連れやバス好きな方をはじめ、ツアーでよくお見かけするリピーターの方もいらっしゃいました。

迷路は早い人で10分ほどで回れますが、「どの方向に進んでいいのか分からない」と迷ってしまう方もいらっしゃいました。「バスが大好き」と皆さん笑顔で、私たちも楽しい時間を過ごすことができました。

高さ3.8メートルあるバスを壁に見立てた大迫力の迷路ですが、どのようにつくったのですか?

9月17日の朝から、運転士が10人がかりで約7時間かけてつくり上げました。人が通り抜けられないくらいの間を空けてバスをピタッと駐車するため、運転士は何度も慎重に切り返しながら、チームワークよくバスを並べていきました。出来上がった迷路はSNSでも話題となりました。

「巨大迷路体験」は全国紙3紙で記事化され、換算値は1000万円を超えました。テレビやネット媒体でも大きく取りあげられました。取材件数やメディア誘致について教えてください。

9月9日に公式ホームページにリリースをアップしたほか、緊急事態宣言中の弊社の状況やその後の一部コースの再開の模様を取材していただいたメディアの方には、メールでリリースをお送りしました。リリースを配信した翌日から多くのお問い合わせをいただき、迷路をつくり始めた17日からツアーの最終日の22日までで、取材件数は26件に上りました。

「週刊新潮」でも取りあげられました。コロナ禍での取材となりましたが、皆さん車庫に取材に来られたのですか?

やはり迷路を撮影したいというメディアがほとんどで、広報は車庫で取材対応に追われました。ツアー開催中には、お客様がご乗車いただいた際に車庫で取材があることを事前にお伝えするため東京駅に担当を配置した日もありました。ここまでの反響は全く想定していませんでしたね。

コロナの感染拡大で、4月から6月までの2カ月間、本社の敷地内にある車庫では100台を超えるバスが留め置かれ、新聞やテレビでも報じられました。その後も、観光業界の動向に合わせ、はとバスがメディアに頻繁に登場しました。

はとバスの歴史の中でもこれほど長期間、バスが動かないということはありませんでした。この光景を誰が予想したでしょうか。10月に入り、少しずつ稼働し始めたものの、例年に比べるとまだまだ厳しい状況が続いています。バスがフル稼働していないというのは辛い状況ですが、迷路にこうして多くの反響をいただけたことは、とても嬉しいことでした。

これまでコロナ禍における弊社の露出の山は、大きく3つありました。1つ目が6月13日の東京観光で1コースを再開した時、2つ目がこの巨大迷路、3つ目が費用の一部を東京都が助成する旅行商品を販売開始した時で、初日の10月23日には取材が殺到し、多くの露出につながりました。

感染予防対策に向けた広報にも力を入れています。公式ホームページで、感染予防対策についての取り組みなど動画を交えて周知されました。

弊社ではすべての事業活動において安全を最優先しています。弊社の感染症予防対策については、日本バス協会のガイドラインに沿ってホームページ上で公表しています。巨大バス迷路というイベントの中で、実際に換気体験をしていただき、バスが安全な乗り物であることを感じ取ってもらえたのではないかと思います。

また、6月13日の一部コースの再開では、事前に乗務員やお客様の検温や車内消毒などシミュレーションを徹底して行いました。現在も引き続きお客様に、より安全な空間で快適にご利用いただけるよう万全の準備をしております。

10月には「Go To トラベル」に東京発着の旅行が追加されました。「Go To トラベル」に合わせ定番の東京観光に付加価値のついたコースを用意し、好評だとお聞きしました。

「Go To トラベル」事業支援の対象となるコースにつきましては、多くのお問い合わせをいただいております。

はとバスは、これまでも東京観光に力を入れてきました。「Go To トラベル」事業支援対象コースは、通常に比べてお得に楽しめることから、都民の方にも地方の方にも東京を再発見してもらえるようなもの、普段行けないような高級感のあるコースをご用意しました。メディアではコースの紹介を中心に取りあげていただきました。

コロナ禍での広報活動において、発信の内容やタイミングなどで悩むことが多くなったと聞きます。どのようにお感じですか?

コロナ禍に関わらず、メディアにとって意義のある情報なのかどうか、常に自問自答しながら仕事しています。弊社の取り組みが、いま世の中でニュースとなっている事柄とどう関わりがあるのか意識しながらリリースを書いていますが、なかなか難しいですね。ただ、今回の迷路のリリースでは、バス業界全体で取り組んでいる車内換気のアピールということもあり、社会的な関心とリンクさせて発信することができました。

また、この迷路のツアーを実施した際には、「Go To トラベルキャンペーン」に東京が対象となっていませんでしたが、特別価格(通常価格から2000円引)で販売しました。特別価格での販売は、「Go To トラベルキャンペーン」をさらに盛り上げたいとの思いからでした。

緊急事態宣言前と宣言中は、皆さん同じだったと思いますが、企業としてどう動くのかが問われました。現在は感染予防に取り組みながら、少しずつ新コースのご案内ができるようになりました。

現在、広報課員は3人いますが、交代で出社しており、その日に全員が揃うことがありません。もちろん、広報の中での情報共有は欠かせませんし、各事業の担当者に対しても広報の方から頻繁にコミュニケーションをとるようにしています。平常時以上に社内状況の把握に気を配っています。

最後に、課題や展望などをお聞かせください。

今後の見通しが立たない状況で難しいのですが、私個人としては、対外的な発信もさることながら、社内的な課題としてコロナ禍での広報活動や情報発信の記録を整理する必要があるのではないかと思います。

特に感染症対策に関する広報活動については、しっかり記録を残していかなければなりません。弊社だけでなく、他の企業や業界としてどういう動きを打ち出し、メディアがどのように取りあげたのか、記事を集めながら分析を進めているところです。

<はとバス> 設立:1948年8月14日
コロナショックに見舞われ、はとバスの看板である東京観光の利用者数も落ち込んだが、国の支援策である「Go To トラベル」や東京都の都内旅行を補助する「都民割」の効果もあり、少しずつ上向いてきた。「都内に住んでいる方でもまだ知らない東京の魅力をバスツアーで感じていただきたい」と杉田さん。旅の楽しさが倍増するバスガイドの案内をはじめ、「はとバスのバスツアーならではの付加価値を今後も高めていきたいと思っています」と語る。
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