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ケーススタディー: JR東日本ウォータービジネス様

(写真右から)
JR東日本ウォータービジネス
企画部 広報担当
小室塁氏
商品部 『青森りんごシリーズ』商品開発担当
上原結衣氏
宣伝戦略部 「アキュア メンバーズ」担当
井上奈菜子氏

JR東日本ウォータービジネス、エキナカの自販機で楽しさお届け

りんごジュースしかない自販機に行列
「アキュア」ブランド、ファンとの接点大切に

コロナ禍で「密」を避け、顧客とリアルの場でつながることが難しくなった2020年、JR東日本のエキナカの自販機を中心に展開する「acure(アキュア)」は、急速にファンを獲得していったブランドだ。風景に溶け込みあまり気に留めることのない自販機だが、機能は進化し続け、自販機をめぐるコミュニケーションは紛れもなく“高密度の対応”で楽しませてくれる。10月に東京駅と上野駅に登場したりんごジュースのみを販売する「りんご自販機」。中でも希少品種「世界一」を使ったジュースを求め行列ができ、メディアやSNSで注目を集めた。「アキュア」を手掛けるJR東日本ウォータービジネスは、どのようにブランドコミュニケーションを展開していったのか。広報・商品開発・会員サービスの担当者に聞いた。
JR東京駅と上野駅に設置された“りんご100%”な「りんご自販機」で希少品種「世界一」を使ったジュースは300円という価格でしたが、3本に1本の割合で買われるというほどの人気でした。

上原: 「りんご自販機」は、2017年3月に青森駅と新青森駅に初めて設置しました。さまざまな品種のりんごジュースが楽しめることから、観光客や地元の方から人気を集め、売り上げ、話題ともに好調でした。その経験から、より多くのお客さまが利用されるJR東京駅と上野駅にも設置し、多くの方にりんごジュースを飲んでいただき、青森の魅力を感じてもらいたいと思いました。

小室: 上原は以前、宣伝戦略部で青森駅と新青森駅の「りんご自販機」を企画した、その人です。入社2年目の時でしたね。

上原: 『青森りんごシリーズ』はいろんな品種で展開しています。宣伝戦略部で品種ごとの魅力や飲み比べの楽しさを、まず地元の方に知っていただくには……と考えを巡らせていたところ、多くの種類のりんごジュースのみを販売する「りんご自販機」を置いてみたらどうかと思い至りました。

『青森りんごシリーズ』は、2020年が10年目という節目でもあるので、開発担当としては、さらに多くのお客さまに、このシリーズの魅力を知ってもらえるよう取り組んでいます。

新聞やテレビ、ネットニュースで露出が相次ぎました。

小室: コロナ禍なので大々的に発表会とはいきませんでしたが、時間帯をいくつか区切って小規模の説明会を東京駅で10月6日に行いました。業界紙やウェブメディアなど9媒体にお越しいただきました。

設置当日たまたま、ある料理家・フードコーディネーターさんが投稿したツイートが拡散のきっかけとなりました。青森の「りんご自販機」を紹介していただき「今日から都内にもこの自販機が上陸したらしい」という投稿でしたが、多くの方の目に留まったようです。

今回、人気の『青森りんごシリーズ』に「世界一」という品種を使った限定商品が加わったことと、首都圏初上陸した「りんご自販機」という2つの話題が重なりました。リリースは「レアすぎる!?りんごジュースだけの自販機が首都圏に上陸!!」と「高すぎる!?1本300円のりんごジュースが数量限定発売!!」と分け、同日に配信しました。切り口を2つにすることで、商品には飲料系の業界紙に注目していただき、「りんご自販機」という売り場には一般紙やスポーツ紙に興味をもっていただけたと思います。

中でも報知新聞のウェブ版で大きく扱っていただき、しかも記事はYahoo!ニュースに取りあげられました。さらにはテレビ朝日の「スーパーJチャンネル」などテレビでも紹介されるなど、露出が露出を呼んで自販機の前には行列ができるほどでした。

SNSから始まった爆発的な拡散は、ネット記事に飛び火して、さらには新聞やテレビといったメディアへと、何乗にも掛け算をしたように拡散していきました。こうした話題の広がり方に驚きました。

「りんご自販機」は「アキュア」ブランドの認知度アップにも大いにつながったと思いますが、いかがでしょうか?

小室: リンゴジュースは国産の、しかも青森県産のりんごのみを使い酸化防止剤も不使用で、他にはない『アキュアメイド』のオリジナル商品です。今回の「世界一」をきっかけに、多くの方に「アキュア」ブランドを知っていただけたと思います。

そもそも、『青森りんごシリーズ』はどのように誕生したのですか?

上原: ひょう害りんごを原材料にしたジュースを当社が取り扱ったことからスタートし、2010年に青森県農村工業農業協同組合連合会(JAアオレン)さんとの共同開発で生まれたのが『青森りんごシリーズ』になります。収穫後の選別で生果用として市場には出せないものの、そのおいしさは変わらないりんごを使用しています。

今回、希少品種を使った『青森りんご 世界一』を限定発売した狙いは何ですか?

上原: 「世界一」という品種は生産量が少なく、なかなか加工用にも出回ってこないので調達には大変苦労しました。10年間『青森りんごシリーズ』を飲んでいただいたお客さまに、何か記念となるような商品をお届けしたかったということと、まだ当社のりんごジュースを飲んだことのないお客さまにも、「世界一」をきっかけに、本シリーズを知っていただければと思っています。

黒衣役と言われる商品開発者ですが、メディアの取材をはじめ、ファンとの交流イベントなど積極的に“表舞台”に出られているという印象があります。

小室: 私が引っ張りだしているところがありますが(笑)。当社の「お店」は、自販機がメインですので、お客さまに直接「ありがとう」と言える場面はほとんどありません。それゆえに、当社では日頃からお客さまとのふれあう機会を意識的に持つようにしています。「アキュア メンバーズ」という会員サービスや、その会員限定のイベントである「アキュア メンバーズデイ」を通じ、お客さまと積極的にコミュニケーションを図っています。

2019年1月に開催したメンバーズデイの「アキュアくんの青森りんごガーデン」で「りんご先生」として登壇したのが上原でした。商品に対して、一番思い入れがあるのは、やはり開発者だと思います。

上原: そうですね。イベントは、お客さまの反応を見ることができますし、ご意見をうかがえる場でもあります。直接お客さまとお会いすると、「そんなニーズもあるんだ」といった意外な発見があります。

今回もメディア取材で「りんご自販機」の前に何度か立たせていただきました。「こういう思いでこの商品を作りました」「こんな時に飲んでいただきたい」といった開発者の「思い」の部分をダイレクトに伝えられる機会は貴重で、これからも大事にしたいですね。

「アキュア」ブランドでは、顧客とどんなコミュニケーションを展開されているのですか?

小室: 2010年に導入した次世代自動販売機は、タッチパネル式を採用し、センサーでお客さまの年代や性別といった属性を判定し、お勧め商品を表示します。これまで一方通行で受け身だったお客さまとのコミュニケーションを双方向に変えていくのが狙いでした。

2013年には、「アキュア メンバーズ」が始まるなど、アキュアブランドでは、お客さまといかにコミュニーションをとっていくかということを軸に自販機事業とブランディングを展開しています。

その「アキュア」ブランドとファンをつないでいるのが会員サービス「アキュア メンバーズ」です。

井上: 商品を購入するたびにポイントが貯まり、貯まったポイントでプレゼントに応募ができるなど毎日“飲む”ことが楽しくなるのが「アキュア メンバーズ」です。会員数は現在17~18万人規模ですが、この会員数を増やし多くの方に「アキュア」のファンになっていただくための新規会員獲得に向けた施策と、ファンの皆さんにより楽しんでいただき購買促進や顧客ロイヤリティを高めるという既存会員に対する施策の2つをミッションに活動しています。

コロナ禍でリアルイベントの開催が難しい状況です。

井上: 7月に初めてオンライン座談会を開催しました。ここで会員の皆さんから出たご意見をヒントに、12月に予定しているオンラインイベントを設計しました。4、5月は、ファンの皆様とどんな接点が持てるのか悩んでいた時期でもありました。オンライン座談会でお客さまとつながり、私も励まされましたし、オンラインだからこそ、リアルイベントにはない「広がり」を持てるということを発見できました。これまでリアルイベントの参加者は1都3県にお住まいの方が多かったですが、オンライン座談会には全国からご参加いただきました。

オンラインでの取り組みでは、「世界一」の発売日当日の10月6日にオンライン試飲会を開催しました。オンラインでの試飲会はもちろん初めてでしたが、応募数はとても多く、「アキュア」の新商品に対する皆さんの関心の高さをあらためて感じました。発売当日に飲める特別感があり、とても盛り上がりました。これからも、リアルないしオンラインイベントで会員ならではの「特別感」を感じていただけるような企画をしていきたいと思います。

以前は自販機を設置するためのプランニングを担当されていたとお聞きしました。

井上: お客さまと直接接点を持てる現部署で「アキュア メンバーズ」の担当になって、メンバーズの皆さんと「アキュア」を一緒に作り上げていくという実感がありますね。会員の皆さんは、お客さまでもあり仲間であるという意識を強く持っています。

最後に、今後手掛けたいことや意気込みなどお聞かせください。

小室: 『青森りんごシリーズ』だけでなく、当社のこの小さなボトルには、いろいろなモノや思いが詰まっています。それを多くの方に自販機を通じてお伝えすることが私の役割です。

上原: 『青森りんごシリーズ』をまだ飲んだことのない方にもぜひ一度飲んでいただきファンになってもらえるような商品づくりをしていきたいと思います。コロナの影響でエキナカの動きも変わってきています。そこを見極めながら、お客さまに新しい楽しさや発見をお届けしたいと思っています。

井上: 今までアプローチできなかった遠方のお客さまにも引き続き、ブランドづくりに参加していただけるような取り組みをしていきたいと思います。エキナカを利用されるお客さまの生活の中に当たり前に「アキュア」があるのが理想型です。今思い描いているのは、「アキュア メンバーズ」の規模をもっと大きくしてブランドの認知度を上げていきたいということです。

<JR東日本ウォータービジネス> 設立:2006年8月1日
「りんごジュースが好きで入社しました」と井上さん。コロナ禍でエキナカの動きが変わり、自販機の飲料販売にも影響が及ぶが、「青森の魅力を感じてほしい」という青森愛は不変だ。ジュース1本1本には、生産者、ファン、「アキュア」に関わるメンバーの思いが詰まっている。
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