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ケーススタディー: 佐川印刷様


佐川印刷
企画制作部 関東制作統括 課長
クリエイティブディレクター
青山大輔氏
<noteのアドレス> https://note.com/daisukeaoyama

佐川印刷のクリエイティブディレクターが解説

社内報、コロナ禍で高まる存在感
「経営ツール」念頭に、楽しんで編集を

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、多くの企業で導入が進むテレワーク。テレワークは浸透してきたものの、従業員のコミュニケーションが滞りがちで、思うように業務が進まないという声も上がっている。このような状況でこそ、本領を発揮するツールが社内報だろう。チームワークを高め、テレワークをソロワークにしないために社内報を活用したい。メディアプラットフォーム「note」で、2020年5月から「社内報の作り方」と題したコラムを連載するのは、京都に本社を構える大手印刷会社「佐川印刷」でクリエイティブディレクターを務める青山大輔さん。青山さんに社内報編集のポイントについて聞いた。
在宅・テレワークで希薄になった社内コミュニケーションを高める手段として社内報に注目が集まっています。社内報編集で培ったきたノウハウをnoteで公開されている青山さんですが、まずはじめに、青山さんの社内報との関わりなどについて教えてください。

佐川印刷は商業印刷を中心に様々なソリューションをご提供する印刷会社で、その中で私は入社以来、クリエイティブ部門でお客様が望まれる制作物の企画から制作を担当しています。

コピーライターで入社しましたが、配属されたのはクライアントの社内報を編集するチームでした。以後7年間、社内報の制作をお手伝いしました。コピーと編集では、使う筋肉が違います。少々オーバーな言い方になりますが、編集という仕事の面白さを教えてくれたのは、この社内報チームでの仕事でした。その後、他社の社内報や会報誌の編集制作の仕事に変わりましたが、この7年で培ってきた社内報の編集のノウハウは今の業務にも活きています。

社内報編集で培ったきたノウハウをnoteで公開されているのはどうしてですか?ブログや自社HPではなく、なぜnoteというメディアを選んだのですか?

社内報はやればやるほど、会社のことが詳しくなりますし、会社のことが好きになれます。会社がどんな考えで動いているのか、どんな店長が優秀とされているのか、役員の方にお話を聞く機会も多く、経営の一端に触れることができます。これが社内報づくりの一番の魅力だと言えます。そのことを伝えたいとずっと思っていました。これが第一の理由です。

また、社内報編集のノウハウ自体あまり引き継がれていないことが多いと感じています。ご発注担当様は3~4年で変わってしまうことが多く、レイアウトや見出しなど編集技術の修得までには至らないケースがほとんどではないでしょうか。社内報担当になって「何とか読まれるようなものを作りたい」とやる気に燃える、そんな方に向けて何か発信できないかと考えnoteを始めました。

noteを選んだ理由は、一般のブログと違い広告が入らないという点です。また、多くの人に読んでもらいたいので、SEO的に優れたプラットフォームであることも魅力でした。ちなみに、現在グーグルで「社内報の作り方」と検索したら、私の記事が1ページ目に表示されるので、とてもうれしいです。

2月8日に投稿された記事はnoteの今月のおすすめ記事にもピックアップされましたね。

noteでは、自分が投稿した記事ごとに表示回数が出るのですが、その表示回数が2月にすごいことになりまして……。通常は200~300回で、「スキ」が10件くらいありますが、「おすすめ」に選ばれたら、その週だけ1万5000回表示され、「スキ」の数も100件を超えました。

「廃止」「デジタル化」と社内報の置かれている環境は激変し、コロナ禍でますます厳しくなっています。

予算削減で最初にコストカットされてしまうのが社内報であるというのは、ある意味仕方のないことです。一方、デジタル化には歓迎すべき点がたくさんあります。ただ、デジタル化で得られるものと失われるものをそれぞれ天秤にかけて判断した結果であればいいのですが、「流行りだから」「便利そうだから」といったイメージだけでデジタル化にシフトしても、結局うまくいかなかったという話をよく聞きます。

そもそも社内報が前時代的なキーワードに聞こえてしまう経営者も中にはいらっしゃるでしょう。ですので、社内報づくりは、経営者の理解を得ることが何よりも大切なことなのです。

社内報のデジタル化は時代の流れだと言えそうですが、紙の社内報は今後どうなるのでしょうか?

まず、社内報の置かれている立ち位置を確認しましょう。従業員全員が待ち望んでいる、そういう媒体ではありません。しかし、経営情報を共有するための必要な媒体、それが社内報です。会社の規模や事情により、紙がいい場合もあれば、デジタルが最適な場合もあり、一概に言えません。

大切なのは、受け手にどれだけ届くかという「リーチ」で考えることです。例えば、社内報をデジタル媒体にして、タイムリーに情報を届け、どこでも見られるようにしたからといって、みんなが見てくれるかは別問題です。私はウェブ広告のメディアプランニングの仕事もするので、そのことを強く意識しています。社内報をイントラなどにアップして「見に来てください」と期待しても、告知なしで読みに来てくれる人は決して多くないでしょう。

ですが、紙だとどうでしょう。一人ひとり手渡しされれば、「同僚が掲載されているかなあ」と中身を見る気になりますよね。紙はプッシュ型、デジタルはプル型の媒体と呼ばれています。紙の良いところは受け手に渡った瞬間が、「発行したという告知」にもなるという点です。そのうえ、電源を入れずにその場ですぐ読めるので、デバイスとしても非常に優秀なのです。ただし、リモート勤務だと渡すだけでも大変なコストがかかるなどアナログならではの不便さは否めません。

社内報の発行やリニューアルに当たり大切なことは「経営的な視点」と、このほかに「発行目的」「コンセプト」を固めることが大切だと強調されています。

特に「発行目的」が最も重要で、会社をよくするための「発行目的」であれば、「コンセプト」は何でもいいと思っています。社内報は会社のお金を使って発行している「経営ツール」です。「経営課題を解決する」という根幹を踏まえてさえいれば、「従業員が仲良くなる」「朝からテンションを上げる」といった「コンセプト」でも全然構わないと私は思います。

noteでは具体的な編集技術やコツが紹介されていますが、「アイデアとは純粋にゼロから生まれるものではなく、既存の組み合わせの新鮮さによって出てくる」とおっしゃっています。編集初心者にも励みになる言葉だと感じました。

真似から入ればいいと思います。他社の社内報でもいいですし、雑誌でもいいですし、そのまま使うのはNGですが、面白いなと感じたフォーマットを借りてアレンジを加えていく、そこからスタートすればいいのではないでしょうか。

企画力をはじめ、デザイン力や編集力を磨くには、どうしたらいいのですか?

社内報が雑誌型であれば、ひたすら雑誌を読むのがいいと思います。私も雑誌を買い倒し、中でも「BRUTUS」が好きなので毎号のように買いました。企画がいいですよね。インタビュー、対談、これからお話しするアンケートなど、さまざまな手法を勉強するのに雑誌は、うってつけです。

クリエイティブの世界でアイデアマンと呼ばれる人がいます。そういった人はひらめきが多いというよりも、圧倒的な知識量を持っている人だと私は思います。ここでの知識はクリエイティブの手法のことだけではなく、これまでお話してきたように、経営課題を含め、会社のことをどれだけ知っているかという「知識」です。これは広報担当者の皆様にとっても大切な「知識」だと思います。社内事情というよりも、会社の収益の根幹はどこか、ここを理解しておく必要があります。

最近では社内報でもコロナに関連した企画や特集を組むところも多いと思います。

コロナで社内に課題があれば、それに即した企画を立てるべきだと思います。コロナ禍では誰しも不安に駆られています。会社としてコロナ対策を講じていることを発信し、「安心感」を届けるということはとても重要です。また、リモートワークをテーマに、肩こりをほぐす体操を紹介するといった気遣いがあってもいいと思います。

現在、社内報の制作現場では、対面取材を控えている会社も増えています。Zoomなどを使って非接触で取材しているようですが、何もインタビューにこだわらなくても面白い企画は可能です。その一つがnoteにも書いた「アンケートの活用」です。

「アンケート」を具体的にどう使ったらよいのでしょう?

アンケートだからこそできる企画として、例えば一つの定型の質問に対し「100人に聞きました」というものがあったとします。100人の回答の違いを見るだけでも、とても面白い特集になっていると思います。

 アンケートを取ってコメントをつくる際、大事になってくるのが小見出しです。顔写真の下に40~50字のコメントを並べたとき、そのままだと読まれません。そこで10文字程度の小見出しを入れるのです。面倒臭いかもしれませんが、ひと手間掛けるのも編集テクニックとして大切なことです。

アンケートで集めたコメントを掲載する場合、その前提はリライトです。集まった回答をそのまま出すことは不可能で、またそれは社内報としてやるべきではありません。「経営ツール」として情報をコントロールするという観点からもリライトは不可欠な作業です。アンケートと少し話がズレますが、同僚とのバーベキューの写真も何でもOKというわけではありません。食品メーカーであればライバル企業のラベルが見えることはNGですし、自動車関連であれば、お酒が映ることは避けなければなりません。

社内報では社内ニュースを掲載することが多いですが、プレスリリースのコピペはダメという記事は説得力がありました。ただ、社内報で培った編集技術は広報でのリリースづくりにも使えるのではとも思いました。

リリースを作った経験がないので、リリースについてプロの意見が出せるわけではありませんが、読み手の求める情報が何かに、重きを置いてつくるのがリリースだと理解しています。リリースは興味がわくワードをいかに盛り込めるか、メディアに取りあげてもらえるような工夫をしていると思います。

社内報は、会社として伝えたいこと、従業員に知ってほしいことを説明する媒体です。その企業が主催する将棋イベントに有名な棋士が参加するというニュースがあれば、リリースではその棋士がいかに話題の人かを伝えますが、社内報では、なぜその棋士を呼ぶのか、会社の意図はどこにあるのかという経緯や背景にまで踏み込んで説明しないと従業員の納得は得られません。

社内報で気になるのが、リリースをコピペしただけのニュース記事です。これではなぜイベントを開いたのか分からないままですし、むしろイベントよりも社員に還元してほしいという声が上がっても仕方ありません。社内報では従業員にとって、会社にとって有益かどうか。この観点をいつも持つようにしたいですね。

社内報編集でそのほか気をつける点はありますか?

新聞や雑誌と違って、社内報は褒めることに重きを置いた希有な媒体と言っていいと思います。社内報の表紙というのはその象徴で、人物を表紙にしたならその人を会社としてオフィシャルに褒めているということでもあります。表紙に社員を使う会社も多いですが、何となく選ぶのではなく、なぜこの人なのかという納得感が必要です。モチーフ選びには念を入れたいところです。

noteでの「社内報の作り方」は「創刊編」に続き、現在「実践編」に入りました。今後の展開について教えてください。

当面は「実践編」が続く予定です。できればあと2つのテーマを考えています。これまではノウハウを公開してきましたが、制作現場での体験談、エピソードについても出していければと思っています。もう一つは「創刊編」でも触れましたが、「デジタル化」に絞ってそのメリット、デメリットを挙げ、これが正解というのではなく、こういう考え方もあるという提起ができたらと考えています。

最後に社内報担当者に対してエールをお願いします。

コロナ禍で、社内報だけでなく、会社の魅力、職場に集まることの意味が見直されています。しかし、働き方が変わっても、会社の中で人と人をつなぐという位置づけの仕事がなくなることはないと確信しています。そして、その社内での人と人のコミュニケーションを担っているのが社内報です。したがって社内報は会社にとって必要なインフラだと言ってもいいと思います。インフラを担う一員としてぜひ誇りを持って編集を楽しんでください。

社内報というカタチが今後どうなるのか私も予想できませんが、社内報づくりは、めちゃくちゃ楽しい仕事です。私も社内報の魅力を発信しながら、これからも社内報づくりのお手伝いをさせていただきたいと思っています。

<佐川印刷株式会社> 創立:1970年11月
社内報編集で悩ましいのが誌面デザイン。青山さんが勧めるのは、企画から連想する雑誌のサンプルを探し、ダミーを当ててレイアウトする「先割」という手法だ。実は本記事でも取材前にレイアウトを先割しているが、「器が決まれば写真撮影も楽になります」という青山さんの言葉通り、先割の効用も多いと感じる。青山さんは「ニュース記事の先割は難しいですが、特集の企画記事はぜひ先割を試してください」と話す。
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